2019/10/08 09:19



ひとりの男の旅を追体験
これはもはや「旅そのもの」



沖縄からこんにちは。
店長のやまうちです。


「写真集で旅する本屋」として
絶対に外せない一冊「The Americans」


ロバート・フランクはスイスに生まれますが
23歳のときにアメリカへと移住します。

そして、55年から56年にかけてアメリカ全土を旅して回り、
そのときの作品を一冊にまとめたのが本書、「The Americans」

つまり、この写真集そのものが
一人の写真家の「旅の記録」なのです。


この「The Americans」は
アメリカ写真史においても名作中の名作であり最重要作でもありますが

そういう難しいことは他に譲るとして
今回は単純に「僕の個人的フェイバリットポイント」を書いていきたいと思います。




ポイントその①
「重厚にして軽やか」


みなさんも旅に出ると
ついつい写真撮りたくなりますよね。

新しい街をふらふらと歩きながら
キョロキョロと辺りを見回すあの感じ。

見るものすべてが新鮮で珍しくて面白くて、
「世界が変わって見える」あの感覚。


「The Americans」にも
そんな雑多さと物珍しさが感じられるのです。


自分が「世界をどう見せたいか?」
ではなく
自分には「世界がどう見えているか?」

もうただ単純に
それだけを追求しているように、僕には思えます。


ああ
彼にはアメリカがこんな風に見えていたんだなぁ、と。

白黒だし古そうだしなんだか難しそう…に見せかけて
実は軽やかでちょっぴりミーハー。

このギャップが良いんです。








ポイントその②
「暗くともポジティブ」


50年代半ばというと
アメリカは高度経済成長の真っ只中。

ですが、ロバート・フランクの作品には
不思議なほどの無力感と倦怠感にあふれています。

一言で言うと「暗い」のですが
かといってネガティブさは感じられません。


普通、このような状況ですと
経済成長による格差の拡大や人種差別、など
政治的な問題がテーマになることが多いと思うのですが

ロバート・フランクの視線は驚くほどフラットです。
少なくとも僕にはそう感じられるのです。


そのまっすぐな目線が
僕にはとてもポジティブに感じられて、良いんです。







フェイバリットポイントその③
「音楽が聴こえる」

たぶん、意識してだと思うんですけど、
「The Americans」には度々ジュークボックスが登場します。


ロバート・フランクがジュークボックスにアメリカを感じたのか、
はたまた、ただの音楽好きだったのか。


この反復がいい感じにリズムを生み出し、
どこからか音楽が聴こえてくるような気さえしてきます。


50年代半ばのアメリカの家や酒場では
どんな音楽が流れていたんだろう。。

そんなことを考えていると
登場人物がグッとリアリティを持って迫ってくるんですよね。


これが、たまらなく、良いんです。







ポイントその④
「極上のロードトリップ感覚」

NY、カリフォルニア、ロスアンゼルス、
デトロイト、ニューオーリンズ、ニューメキシコ…

撮影地は本当にアメリカ全土に渡ります。
やはり、車で旅して回ったのでしょう。


一冊を通してのストーリー性を重視しているため
時系列も撮影地もバラバラに収められていますが

それでも、極上のロードトリップ感覚は濃密。
変な高揚感と、なんとも言えない心細さに襲われてきます。


これがまた、たまらなく、良いんです。








ポイントその⑤、というかまとめ
「旅そのもの」


ロバート・フランクという一人の写真家が
はじめてアメリカという国を旅しながら、

ちょっぴりミーハーで軽やかなステップで
カメラ片手に歩き回り、

その国の現状を否定もせず批判もせず
フラットな目線で素直に写し撮り、

音楽や食事やお酒を楽しみながら
また車へ乗り込み次の街へと流れていく…


「The Americans」で得られる追体験は
もはや旅そのものです。

ここまで気持ちよく旅の気分に浸れる写真集は
なかなかありません。


写真史においても最高峰に位置する本ではありますが、
それ以上に、あなたにとっても特別な一冊になることでしょう。



Robert Frank / The Americans / 5900円
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