2018/05/31 14:49

今、伊丹十三の「ヨーロッパ退屈日記」を読んでいる。

もう何回目だろうか?

なんど読んでもおもしろい、というか、感心する。

 

こんなに軽やかでウィットに富んで、しかも本質的な文章は

他ではなかなか得られない快感である。

 

で、

その中で伊丹十三がパリについてこんなことを書いている。

 

「どうしてパリはこんなに綺麗なんだろう。

人々は、グレイや黒やいろんな茶色の革なんか着て歩いているねえ。

あれは、街に合わせてるんだ。

連中は、街を上等の外套みたいに着こんでいるんだ」

 

 

いやぁ。うまいじゃないですか。

まさにハタと膝を打ちたくなるじゃないですか。

 

もう何年も前のことだけど

妻とてくてくとパリを歩いていて

「なんで皆が皆、こんなに素敵なんだろう」と疑問に思っていたことを

いとも簡単に解決してくれる一文じゃないですか。

 

そうなんだよ。

皆、街に合わせてたんだよ。

 

 

悔しいくらい絵になる街。

泣けてくるほど絵になる街。

それがパリなんだねぇ。

 

ある日、

ホテルの前で佇んでいたとき。

 

目の前を青年が颯爽と歩いていたんだよ。

ひしとワインのボトルを抱えてね。

 

それがもう見事にパリと調和してて

悔しいくらい格好良かったんですよ。

 

たぶん本人にはなんでもないことで、

普段着でちょっと近所のスーパーへ今日のワインを調達しに行った帰り、

なんだろうけど、それがもう見事なもんなワケです。

 

あまりにも強烈な一瞬で

未だにパリの思い出というと「あの青年」が浮かぶホドです。

 

 

さて、

ついつい十三ぽい口調となりましたが

そんなパリを見つめ続けたフランス人写真家、

ティエリー・コリンによる一冊。

 

1982年から2012年の30年に及んで撮り溜めたパリは

まさにどこを切り取ってもパリ。

 

ため息のひとつも出ようというものです。

 

 

フランス人だから、なのかは分かりませんが、

自然体で切り取られた様々なパリの表情を眺めていると

いつしか自分が鳥になってパリの街をあちこちと飛び回っているかのような、

そんな感覚すらしてきます。

 

 

さて

最後も伊丹十三の言葉で締めましょうか。

 

「街、という、どんなにでも勝手気儘に穢(きたな)くなりうるものが、

あんなに美しいままの姿で存在し続けているという事実、

これが実に信じ難く思われるのです」

 

うーん

なんど読んでもハタと膝を打たずにいられませんねぇ。

 

 

 

[ Paris Fugues / Thierry Colin ]

Snoeck isbn-9789461610508
134pages 30.2X28.9cm Hardcover
Text:French, English, German
Condition: New

3000yen

 

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